日本版DBSは、こどもに接する仕事に就く人に性犯罪の前科がないかを確認する仕組みです。根拠になる法律は「こども性暴力防止法」(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)で、2026年12月25日に施行されます。
放課後等デイサービス(放デイ)や児童発達支援など、都道府県等の指定を受けた障害児通所支援の事業所は、この法律で措置が義務になる「学校設置者等」に当たります。学習塾などと同じ「認定」(任意で手を挙げる仕組み)ではありません。この記事では、義務の対象になる根拠と、事業所が講じる措置の全体像を整理します。
この記事は、2026年11月時点の法律・施行規則・こども家庭庁のガイドライン(令和8年9月改訂)に基づいています。
障害児通所支援は「義務」の対象
こども性暴力防止法は、対象の事業者を2つに分けています。
| 区分 | 法律上の位置付け | 障害児通所支援での該当 |
|---|---|---|
| 学校設置者等(義務) | 第2条第3項。措置を講じる義務がある | 児童福祉法の指定を受けた障害児通所支援事業(第2条第3項第2号イ) |
| 民間教育保育等事業者(認定) | 第2条第5項。国の認定を受けた場合に措置を講じる | 指定を受けていない児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援の事業(第2条第5項第4号〜第7号) |
第2条第5項第4号〜第7号は、いずれも「指定障害児通所支援事業に係るものを除く」と書かれています。つまり、指定を受けて報酬を請求している事業所は義務の側、指定を受けずに行っている事業は認定の側です。ガイドラインも、義務の対象として「指定障害児通所支援事業(児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援又は保育所等訪問支援)」を挙げています。
義務の対象なので、認定のように「申請するかどうか」を選ぶことはできません。
対象になる職種
法律は、義務の対象になる従事者を「教員等」と呼びます。障害児通所支援では、事業所の管理者と、障害児に対して支援を行う業務に従事する人が該当します(第2条第4項第15号)。
ガイドラインは、指定障害児通所支援の職種を次のように整理しています。
| サービス | 職種全体が対象 | 職種の一部が対象になり得る |
|---|---|---|
| 児童発達支援 | 管理者、児童指導員、児童発達支援管理責任者、機能訓練担当職員、看護職員、保育士、栄養士、指導員、その他報酬算定の対象として法令上規定される職員 | 嘱託医、調理員、送迎バス等の運転手、その他職員 |
| 放課後等デイサービス | 管理者、児童指導員、保育士、児童発達支援管理責任者、機能訓練担当職員、看護職員、指導員、その他報酬算定の対象として法令上規定される職員 | 嘱託医、送迎バス等の運転手、その他職員 |
| 居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援 | 管理者、訪問支援員、児童発達支援管理責任者、指導員等 | その他職員 |
「職種の一部が対象になり得る」職種は、次の3要件で事業所が判断します。
- 支配性:こどもと接する中で、指導などを通じて優越的な立場に立つ機会があるか
- 継続性:日常的・定期的に、または反復してこどもと接する機会があるか
- 閉鎖性:他の職員や保護者がいない、第三者の目に触れない状況でこどもと接する機会があるか(SNSなどオンラインの接触も含む)
送迎の運転手や事務職員は、業務の実態でこの3要件を満たすかどうかを見て決めます。雇用形態や雇用契約の有無は問われず、短期間の労働者やパートも対象になり得ます。
事業所が講じる措置
法律が学校設置者等に求める措置は、大きく次のとおりです。
| 措置 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 犯罪事実確認 | 第4条 | 国から交付される犯罪事実確認書で、従事者が特定性犯罪の前科のある人に当たるかを確認する |
| 早期把握 | 第5条第1項 | こどもとの面談などで、性暴力のおそれを早く把握する措置 |
| 相談体制 | 第5条第2項 | こどもが相談しやすい体制。事業所内の相談員や窓口の設置・周知と、外部の相談窓口の周知 |
| 防止措置 | 第6条 | 確認の結果などから性暴力のおそれがあると認めるとき、こどもと接する業務に就かせないなどの措置 |
| 調査・保護 | 第7条 | 性暴力の疑いがあるときの調査と、被害を受けたこどもの保護・支援 |
| 研修 | 第8条 | 対象となる従事者に研修を受講させる |
| 情報管理 | 第11条〜第14条 | 犯罪事実確認で得た情報の適正な管理。情報管理規程の作成 |
| 帳簿・定期報告 | 第15条 | 犯罪事実確認の実施状況を帳簿に記載・保存し、国に定期的に報告する |
犯罪事実確認の期限や帳簿の詳細は「日本版DBSの犯罪事実確認:確認の対象者・時期・帳簿」、施行までの準備と研修は「令和8年12月25日の施行までに終える研修と準備」で整理しています。
運営基準と児童福祉法も改正される
施行日にあわせて、障害児通所支援の運営基準と児童福祉法も改正されます。運営指導で確認される項目に関わる部分です。
- 運営基準 第46条(児童対象性暴力等の防止)が新設されます。指定児童発達支援事業者は、児童等対象業務従事者(障害児と接する業務に従事する人のうち、支配性・継続性・閉鎖性のある環境で障害児に接する人)の犯罪事実確認その他の必要な措置を講じなければならない、という規定です。放課後等デイサービスなどには準用されます
- 児童福祉法第21条の5の18に第4項が追加され、指定障害児通所支援事業者は、こども性暴力防止法で定めるところにより必要な措置を講じなければならないとされます
- 同法の勧告・命令(第21条の5の23)と指定の取消し等(第21条の5の24)の事由に、こども性暴力防止法やそれに基づく命令・処分への違反が加わります
あわせて、犯罪事実確認の義務に違反していると国が認めるときは、事業者の名称などが公表されます(こども性暴力防止法第17条)。帳簿を備えない、記載しない、虚偽の記載をする、保存しない場合は50万円以下の罰金で、法人も罰せられます(こども性暴力防止法第46条・第48条)。
よくある誤解
- 「放デイは学習塾と同じ認定制度だから、申請しなければ関係ない」 指定を受けた障害児通所支援は義務の対象です。認定の対象は、指定を受けていない事業に限られます
- 「資格のある職員だけ確認すればよい」 管理者や指導員なども職種全体が対象です。運転手などは3要件で個別に判断します
- 「施行日に全員の確認を終えなければならない」 施行時にすでに働いている職員は、令和11年12月24日までに確認すればよいとされています。国が都道府県ごとに申請時期を割り振ります。一方、研修は原則として施行前に受講させる必要があります
- 「犯罪事実確認書の写しを人事ファイルに保管しておく」 犯歴情報の記録・保存は極力避けることが基本原則です。保存する場合は、その方法に応じた情報管理規程が必要です
まとめ
- 指定を受けた放課後等デイサービス・児童発達支援などは、こども性暴力防止法の「学校設置者等」として措置が義務になる。施行は2026年12月25日
- 対象は管理者・児童指導員・保育士・児童発達支援管理責任者などの職種全体。運転手などは支配性・継続性・閉鎖性の3要件で判断する
- 措置は、犯罪事実確認、早期把握、相談体制、防止措置、調査・保護、研修、情報管理、帳簿・定期報告
- 運営基準第46条の新設と児童福祉法の改正で、指定の取消し等の事由にも関わる
対象業務従事者の範囲の決め方や、所轄庁(指定権者)への報告の方法は、都道府県・市町村によって運用が異なる場合があります。事前に所管の指定権者へご確認ください。