日本版DBS(こども性暴力防止法)は、令和8年(2026年)12月25日に施行されます。指定を受けた放課後等デイサービスや児童発達支援などの事業所は、措置が義務になる「学校設置者等」に当たります。

施行時にすでに働いている職員の犯罪事実確認は、令和11年12月24日までに行えばよいとされています。一方、研修は原則として施行前に受講させる必要があります。この記事では、施行日までに終えておく準備を、こども家庭庁の「義務事業者用準備ガイド Ver.1.1」の項目に沿って整理します。

2026年11月時点の準備ガイドと施行ガイドライン(令和8年9月改訂)に基づいています。

施行までの準備は4分野・10項目

準備ガイドは、施行までの最低限の準備として次の項目を挙げています。

分野 項目
1 周知 制度についての従事者等への周知
2 犯罪事実確認・防止措置 ① 不適切な行為の範囲の検討・確定
② 対象業務従事者の範囲の検討・確定
③ 就業規則等の見直し(不適切な行為の範囲、懲戒事由等)
④ 採用募集要項等の見直し、採用過程での性犯罪前科の事前確認
3 体制整備 ① 性暴力事案の疑いが生じたときの報告・対応ルールの策定・周知
② 相談体制の整備(相談窓口の設置・周知等)
③ 従事者向け研修の計画策定・実施
4 情報管理 ① 情報管理規程の作成と、規程に沿った情報管理体制の整備

準備ガイドは、一定の時間を要する事項もあるとして、早めの着手を求めています。以下、項目ごとに要点をまとめます。

1 従事者への周知

施行後、こどもと接する業務に従事する人には性犯罪前科の確認が必要になること、前科がある場合はこどもと接する業務に就けなくなることを、職員に伝えます。

施行時にいる職員の確認は、国が都道府県ごとに割り振る申請対象月に行います。申請には職員自身による戸籍等の登録が必要で、国の専用システム(こまもろうシステム)を使います。準備ガイドは、マイナンバーカードの準備を職員に呼びかけるよう求めています。

2 犯罪事実確認・防止措置の準備

① 不適切な行為の範囲

「不適切な行為」とは、性暴力には当たらないものの、業務上必要とはいえず、続けば性暴力につながるおそれがある行為です。準備ガイドは次のような例を示しています。

  • こどもとSNSで私的なやり取りをする
  • 私的な端末で、業務外の目的でこどもの写真を撮る
  • こどもと二人きりで私的に会う
  • 不必要な身体接触をする
  • 特定のこどもばかり理由なく担当しようとする

何が不適切かは、事業の内容やこどもの発達段階・特性によって変わります。障害児支援では、排せつや着替えの介助、送迎など、身体接触や一対一の場面が業務として生じます。外形的に当てはまる行為を業務として行う場合は、事前にルールを決めておきます。範囲は現場の職員と話し合いながら決め、こどもや保護者にも周知します。

② 対象業務従事者の範囲

管理者、児童指導員、保育士、児童発達支援管理責任者などは職種全体が対象です。送迎の運転手や事務職員などは、支配性・継続性・閉鎖性の3要件で、業務の実態に応じて判断します。

③ 就業規則等の見直し

防止措置として懲戒処分をするには、あらかじめ就業規則に懲戒事由と種別を定め、周知しておく必要があります。準備ガイドは、就業規則に記載する事項の例として次を挙げています。

  • 対象業務従事者の範囲
  • 児童対象性暴力等と不適切な行為の禁止
  • 犯罪事実確認の手続に応じる義務
  • 試用期間の解約事由
  • 懲戒事由

④ 採用の見直し

内定者に性犯罪前科があると分かった場合、内定取消しなどの対応が必要になります。内定取消しが有効と認められるには、法に基づく確認とは別に、採用過程で性犯罪歴がないことを書面等で確認する、内定取消事由をあらかじめ明示する、といった事前の対応が必要です。施行前の募集から、募集要項を見直しておきます。こども家庭庁が、募集要項・求人票や誓約書・内定通知書の参考例を公表しています。

3 体制整備

① 報告・対応ルール

性暴力の疑いが生じたときの報告方法・報告先・報告内容(報告ルール)と、報告を受けた後の対応者・対応事項・手順(対応ルール)を定め、職員・こども・保護者に周知することが義務付けられています。準備ガイドは、一定の権限を持つ役職者を「こどもの安全・保護に関する責任者」とし、複数の職員でチームを作る形を例示しています。

② 相談体制

こどもが相談できるよう、次の2つが義務付けられています。

  • 事業所内での相談員の選任、または相談窓口の設置・周知
  • 外部の相談窓口の周知

障害児の場合は、地方公共団体の障害者福祉の担当課や自立支援協議会も相談窓口になり得るとされています。こどもの発達段階や特性に合わせ、複数の相談先から選べるようにします。

③ 研修

研修は次の節で詳しく説明します。

4 情報管理規程

犯罪事実確認で得た情報を適正に管理するため、情報管理規程を作り、体制を整えます。規程には、基本的事項と、組織的・人的・物理的・技術的な情報管理措置の内容を盛り込みます。

国のひな型は3種類です。

ひな型 確認書を見る人 システム外での記録・保存
① 責任者1人のみ しない
② 責任者を含む複数名 しない
③ 責任者を含む複数名 する

犯歴情報を扱う人は必要最小限にし、システム外での記録・保存は極力控えることが基本原則です。

研修:いつまでに、何を受講させるか

受講時期

対象者 受講時期
施行の際に、こどもと接する業務に従事している人 原則として施行前(令和8年12月24日まで)
施行日の前日までに従事させることを決めていて、施行日後に従事させる人 業務に従事させるまで
施行後に新たに従事させる人 こどもと接する業務に従事する前

研修の実施主体は問われません。事業所が自ら実施しない場合でも、職員が受講したことを事業所が確認しなければなりません。ガイドラインは、1回限りではなく定期的に受講させることが望ましいとしています。

研修事項

研修は、次の内容を含み、座学と演習を組み合わせたものである必要があります。

  • ア 児童対象性暴力等の防止に関する基礎的事項(こどもの権利、法の概要、性暴力の特性、加害の要因など)
  • イ 児童対象性暴力等と「不適切な行為」の範囲
  • ウ 疑いの早期発見(日常観察、面談・アンケートの留意点)
  • エ 相談・報告を踏まえた対応
  • オ 被害を受けたこどもの保護・支援
  • カ 犯罪事実確認で職員に求められる対応
  • キ 防止措置の基礎的事項
  • ク 厳格な情報管理の必要性

国の研修教材

こども家庭庁が従事者向けの研修教材を公表しています。

教材 使い方
標準動画 法第8条等に基づく研修として、原則としてこれを用いた研修を受講させる
要点動画 不定期・短期間で従事する人など、標準研修の受講がすぐには難しい人に使える
研修資料・演習資料・確認テスト 標準動画の補足、演習の題材、受講後の知識の確認
研修の手引き・研修実施計画書・研修受講記録 研修を企画・運営する担当者向け

業界団体や事業所が独自に行う研修も、ガイドラインの研修事項を満たし、座学と演習を行うものであれば認められます。演習では、身体接触の方法など現場で判断が難しい場面を題材にすると、事業所のルールの見直しにもつなげられます。

施行日までのチェックリスト

  • 職員に制度の概要と、マイナンバーカード・戸籍等の手続が必要になることを伝えた
  • 不適切な行為の範囲を、現場の職員と話し合って決めた
  • 対象業務従事者の範囲(運転手・事務職員などの扱いを含む)を決めた
  • 就業規則に、対象業務従事者の範囲・禁止行為・確認に応じる義務・懲戒事由を定めた
  • 募集要項・誓約書・内定通知書を見直した
  • 報告ルールと対応ルールを定め、職員・こども・保護者に周知した
  • 事業所内の相談窓口を設け、外部の相談窓口とあわせて周知した
  • 現職の職員全員が、研修事項を満たす研修を受講したことを確認・記録した
  • 情報管理規程(ひな型①〜③のいずれか)を作り、責任者を決めた

まとめ

  • 施行は令和8年12月25日。準備ガイドは、周知・犯罪事実確認と防止措置・体制整備・情報管理の4分野を最低限の準備として示している
  • 現職の職員の研修は、原則として施行前に受講させる。犯罪事実確認は令和11年12月24日までに、割り振られた申請対象月で行う
  • 研修は研修事項ア〜クを満たし、座学と演習を組み合わせる。国の標準動画を使うのが原則
  • 就業規則・募集要項・報告と対応のルール・相談窓口・情報管理規程を、施行日までに整える

犯罪事実確認の期限や帳簿は「日本版DBSの犯罪事実確認:確認の対象者・時期・帳簿」で解説しています。所轄庁(指定権者)への報告の方法や、運営指導での確認の仕方は自治体によって異なる場合があります。事前に所管の指定権者へご確認ください。