福祉・介護職員等処遇改善加算は、職員の賃金改善に取り組む事業所が、1か月の総単位数に一定の率を掛けて算定する加算です。令和8年6月から処遇改善加算の区分はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6つになり、率も引き上げられました。この記事では、区分ごとの加算率と要件、単位数の計算方法、届出の期限を整理します。

この記事は令和8年度(2026年6月施行の改定を反映、2026年11月時点)の告示・通知に基づいています。処遇改善加算の通知は年度ごとに出されるため、令和9年度以降は最新の通知を確認してください。

令和8年6月からの6区分

令和8年度の改定では、加算の対象が福祉・介護職員から障害福祉従事者に広がり、率が引き上げられました。あわせて、生産性向上や協働化に取り組む事業所向けに、Ⅰ・Ⅱの上乗せ区分として「ロ」が新設されています。

区分は1つだけを選んで算定します。Ⅰイ・Ⅲのように、同じ月に2つの区分は重ねられません。

加算率(1000分の◯)

区分 児童発達支援 放課後等デイサービス 居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援
Ⅰロ 158 161 156
Ⅰイ 152 155 150
Ⅱロ 155 158 区分なし
Ⅱイ 149 152 区分なし
Ⅲ 139 142 139
Ⅳ 117 119 117

居宅訪問型児童発達支援と保育所等訪問支援には、配置等要件に関する加算がありません。そのためⅡの区分は設けられていません。

令和8年4月・5月は従前の4区分・従前の率でした。たとえば放課後等デイサービスは、Ⅰが13.4%、Ⅳが9.8%です。6月からはⅠイが15.5%、Ⅳが11.9%に上がっています。

区分ごとの要件

区分は、満たしている要件の数で階段状に決まります。通知の3(1)で定められた要件①〜⑧と区分の関係は次のとおりです。

要件 Ⅳ Ⅲ Ⅱイ Ⅱロ Ⅰイ Ⅰロ
① 月額賃金改善要件 ○ ○ ○ ○ ○ ○
② キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備) ○ ○ ○ ○ ○ ○
③ キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施) ○ ○ ○ ○ ○ ○
④ キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み) − ○ ○ ○ ○ ○
⑤ キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額460万円以上が1人以上) − − ○ ○ ○ ○
⑥ キャリアパス要件Ⅴ(配置等要件) − − − − ○ ○
⑦ 職場環境等要件 ○ ○ ○(上位) ○(上位) ○(上位) ○(上位)
⑧ 令和8年度特例要件 − − − ○ − ○

要点を補足します。

  • ⑥ 配置等要件:児童発達支援・放課後等デイサービスでは、福祉専門職員配置等加算の届出をしていることです。Ⅰイ・Ⅰロを算定できるかどうかは、この加算の届出で分かれます
  • ⑤ キャリアパス要件Ⅳ:経験・技能のある福祉・介護職員のうち1人以上の改善後の賃金見込額が年額460万円以上であることです。職場環境等要件の取組を全体で14以上実施していれば、満たしているものとして扱われます
  • ⑦ 職場環境等要件:Ⅲ・Ⅳは5つの区分ごとに1以上かつ全体で8以上、生産性向上の取組は2以上です。Ⅰ・Ⅱは5つの区分ごとに2以上かつ全体で14以上(通知別紙1表2-2)、生産性向上の取組は3以上(18番「現場の課題の見える化」は必須)で、取組内容の公表も必要です。1法人で1事業所のみを運営するような小規模事業者は、生産性向上の取組として24番(協働化など)を実施していれば足ります
  • ⑧ 令和8年度特例要件:生産性向上の取組を5以上(18番と21番は必須)実施するか、法人が社会福祉連携推進法人に所属していることに加え、Ⅱロの加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てることです

「ロ」は、「イ」の要件をすべて満たしたうえで⑧を加えた区分です。⑧だけで上位の区分に上がれるわけではありません。

令和8年度は、一部の要件について、処遇改善計画書で令和9年3月末までの対応を誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱う取扱いがあります(Q&A問8-1も参照)。誓約した取組は実績報告書で確認されます。一方、配置等要件(福祉専門職員配置等加算の届出)と月額賃金改善要件には誓約の定めがなく、届出の時点で満たしている必要があります。

区分にかかわらず、加算額に相当する賃金改善を行うことが前提です。賃金改善が加算額を下回れば返還の対象になります。

単位数の計算方法

処遇改善加算の単位数は、次の式で求めます。

1か月の総単位数(基本報酬+処遇改善加算以外のすべての加算・減算)×加算率

基本報酬だけに率を掛けるのではありません。自治体が独自に設けている加算も総単位数に含めます(Q&A問9)。また、通常の加算・減算は割合を掛けるたびに端数を四捨五入しますが、処遇改善加算は対象となる単位数の合計に率を掛けて算定します。

計算例:放課後等デイサービス

放課後等デイサービスで、ある月の単位数が次のとおりだったとします(例示)。

  • 基本報酬:574単位×延べ198人日=113,652単位
  • 処遇改善加算以外の加算の合計:36,348単位
  • 総単位数:150,000単位
区分 計算 加算の単位数 1単位10円の場合
Ⅰロ 150,000×161/1000 24,150単位 241,500円
Ⅰイ 150,000×155/1000 23,250単位 232,500円
Ⅱイ 150,000×152/1000 22,800単位 228,000円
Ⅳ 150,000×119/1000 17,850単位 178,500円

ⅠロとⅣの差は月63,000円、年間で約75.6万円です。ただし、加算収入は賃金改善の原資で、事業所の利益にはなりません。上位区分ほど、キャリアパスの整備や職場環境の取組、事務の負担も増えます。

1単位の単価は地域区分で変わり、10円から、上限はサービスにより11.20〜11.52円です。

届出の期限(原則)

令和8年度分の通知で定められた原則は次のとおりです。

書類 期限
処遇改善計画書 その事業年度で初めて処遇改善加算を算定する月の前々月の末日まで
体制届出(体制等状況一覧表など) 算定を開始する月の前月15日まで
変更届出書(区分を変える場合など) 変更後の区分で算定を始める月の前月15日まで
実績報告書 各事業年度の最終の加算の支払があった月の翌々月の末日まで(令和8年度分は通常、令和9年7月31日)

たとえば令和9年2月から新たに算定したい事業所は、計画書を令和8年12月末日まで、体制届を令和9年1月15日までに出すことになります。計画書は体制届より早い期限です。

令和8年度は、4月からの算定に向けた「令和8年4月15日」などの特例の期日もありましたが、すでに過ぎています。これから新規算定や区分の変更をする場合は、上の原則で逆算します。都道府県知事等は計画書の期日を延長できるとされているため、実際の受付期間や様式は指定権者に確認してください。計画書と実績報告書は、根拠資料とあわせて2年間保存します。

まとめ

  • 令和8年6月から6区分。率は放課後等デイサービスでⅣ11.9%〜Ⅰロ16.1%
  • 区分は要件の積み上げで決まり、Ⅰイ・Ⅰロには福祉専門職員配置等加算の届出が必要
  • 加算額は「処遇改善加算以外のすべてを含む月の総単位数×率」
  • 計画書は初めて算定する月の前々月末日、体制届は前月15日まで

職場環境等要件の取組の数え方、誓約の扱い、届出の受付方法などは、指定権者によって運用が異なる場合があります。事前に所管の指定権者へご確認ください。